今日は、小春日和の嬉しくなるような温かさを感じる日になっている。今日から水曜日までの3日間、幕張で研修会というのがあり、何か話すように依頼されてはいるが、「すべて世はこともなし」でもいい気がしているし、「立派になること」が前提とされている会議や研修は、自分の肌に合わない気がしている。
それはともかく、ある程度の能力と財力を持った人間が他者の危機を救い、成功していくという物語は、たとえばわたしのような人間にとって、面白くも何ともないばかりか、うんざりする思いがするし、どことなく、社会的に成功したいと思っている人間や世間に媚びたような感じさえする。
井川香四郎『うだつ屋智右衛門縁起帳』(2012年 光文社文庫)は、そんな作品だった。表題の「うだつ屋」というのは、建築物の棟上げをする意味の言葉として用いられる「うだつが上がる」から来た「成功する」とか「立派になる」とかいう意味で使われる言葉を用いたもので、要するに「人を成功させるのを商売にしている」という意味であろうし、主人公の「智右衛門」という名前は、知恵を用いてそれを行う人物という設定であろう。表題からして、安直な気がするし、この作者の同じような成功物語である『てっぺん 幕末繁盛記』(2012年 祥伝社文庫)を読んだときにも感じた軽薄さが、本作でも感じられた。
本書には四話が収められているが、いずれも、財力も知恵も人徳も備えた智右衛門が、財政窮乏で困窮する商人や個人、あるいは諸藩の財政再建策を打ち出して、それを成功させていく物語である。その策も、まあ、陳腐といえば陳腐のような気がする。
社会への迎合以外に作者がどんな思考をしてこういう作品を書くのかはわからないし、この作品については、ここに記しておくほどでもなかったのだが、まあ、一応読んだということで記した次第である。
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