2014年9月15日月曜日

この夏のこと


 7月にこれを少し書いて以来、2ヶ月余が経ってしまい、ずいぶんとご無沙汰してしまった。この間、雨の多い異常なくらいの蒸し暑さに閉口しつつも、甲子園への出場をかけた県予選の応援に炎天下の野球場に行ったり、いくつかの研修や講演などがあったりして、えらく日常の出来事に追われる日々を過ごしていた。加えて、集団的自衛権についての意見表明を求められていたので、その一文を書いたり、現在の文部科学省が進めようとしている道徳教育の教科化を契機として道徳教育と宗教教育の問題に取り組んだりしていた。道徳の根幹が「愛」であるというのは、考えてみれば思想史上まだ新しい感覚ではあるなあと思ったりする。こちらはまだ道半ばで、ようやく後半と結論の部分に入ったところである。

 それともう一つ、この夏取り組んでいたのは、ずいぶん以前に『思想の世界』というメールマガジンの形で書いていたS・キルケゴールの生涯と思想を取り扱った「逍遥の人」を電子書籍の形で配布することだった。これはメールマガジンの時にもたくさんの方々に読んでいただいたし、千葉に在住だったシステムエンジニアをされていたT・Tさんがご自分のサイトにしてインターネットでも読めるようにしてくださっていたのだが、そのサイトが閉鎖されてしばらくたつし、今も、キルケゴールの研究者や学生の方々からの質問が時折届いたりしていたので、改めて少してを入れて電子書籍でも読めるようにしたいと思っていたから、この夏、思い切ってAmazonKindleで出すことにしたのである。

 ただ、電子書籍で読めるようにするためには、ファイルをePubという形式に変換したりしなければならず、体裁を整えたりするのにえらく時間がかかってしまった。しかし、八月末に完成して、『永遠の単独者 S・キルケゴールの生涯と思想』というタイトルで出すことができた。無料を望んだが、最低価格をつけなければならず、3ドルという有料になってしまったが。

 また時間ができたら、次の思想・哲学史を取り扱った『西洋思想の散歩道』も電子書籍で出したいと思っている。

 この間、時代小説もいくつか読んでいたので、記憶に残っている署名だけでも、ここに記しておきたい。

 一つは、吉川英治全集(講談社版)の第4巻『万花地獄』、『隠密七生記』、第5巻『江戸三国志』、第11巻『松のや露八』、『恋山彦』、『遊戯菩薩』で、吉川英治のテンポのある痛快冒険時代小説の醍醐味や、作品の背後にある著者の思いなどがひしひしと伝わる作品を読んだ。もう一つは、勧善懲悪がすっきりとした形で読み物としては抜群に面白く、現在の時代小説の源流とも言えるような山手樹一郎全集(講談社版)の内の主に「浪人もの」である第13巻『のざらし姫』、『浪人横町』、第33巻『浪人八景』、第3637巻『浪人市場』などである。その他にも軽い文庫本を読んだりしていた。

 ただ、利用していた市立図書館が改築のために来年の2月末まで閉館となり、全集はなかなか手に入らないので、吉川英治と山手樹一郎の全集はしばらくお預けとなってしまった。

 そして、先日、本屋で梶よう子『迷子石』(2010年 講談社 2013年 講談社文庫)を見つけ、買ってきて読んだので、次回はこれについて記すことにして、今日はご無沙汰の言い訳を書くことで終わることにする。甥が脳腫瘍を患い、34歳で天に召されたこともあって、この夏はひどく疲れた夏ではあった。

 それにしても、熊本の夏は想像以上で、夏はやはりどこかに逃げ出すに限ると思ったりする。ようやく少し秋の気配がして、曼珠沙華とも言われる彼岸花が咲き始めている。

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