2009年12月2日水曜日

佐藤雅美『啓順純情旅』(1)

 今日もよく晴れて、少し気温が上がったようだ。だが、好天気も今日までらしい。明日からまた天気が崩れるという予報が出ている。

 昨日は、新約聖書の『使徒言行録』のギリシャ語原文を少し時間をかけて読みながら、いくつかのことをまとめたりした。『使徒言行録』は、イエス後の弟子たちの活動の記録を記したものだが、これを書いた著者ルカと呼ばれる人は、本当に心の柔らかな人だとつくづく思う。

 それをしている途中で、中学生のSちゃんが訪ねてきてくれたので、化学の「イオン」についての話をしながら、ふと、人間にもそれぞれの「イオン価」というものがあるのかもしれないと思ったりした。「イオン価」によって、ある者はつながり、またある者は反発して離れていく。ある者はつながっても持て余して、他の者と繋がろうとする。そして、イオンの交流によって電気エネルギーが生じていく。おもしろい現象がそこで生じてしまう。人間と世界の現象はそんなものかもしれない。

 昨夜から、佐藤雅美『啓順純情旅』(2004年 講談社)を読んでいる。これは、昨日も書いたように、前作『啓順地獄旅』の続編で、丹波篠山を追われるようにして旅立った啓順が、行くあてもなく、竹居の安五郎のところへでも行って村医者でもしようと甲州へ向かう途中に、話のついでだと伊勢路を通り、伊勢に向かうところから始まっている。

 やっと幸せをつかんだと思ったら、そこを追われるようにして出る。啓順の旅は、そのことの繰り返しである。

 啓順は、伊勢で、同行になった者に冗談をしかけられて行った妓楼での一悶着から、衰退してしまった渡世人一家と知り合い、結局、その渡世人一家を助けることになってしまい、渡世人一家を束ねる親分になって、その渡世人一家の争いを解決したりするが、結局、竹居の安五郎と津向の文吉の渡世人同士の争いに加担することになり、甲州へと向かうことになる。

 その時、彼は、以前、甲州で病を治し、惚れていた美女のことを聞き、その女性に会いたいという思いもあって、竹居の安五郎のところへ行くのである。ところが、その女性はすでに結婚していた。だが、彼女は亭主に乱暴され、亭主の元を逃げ出して啓順のことを聞いて会いに来る。啓順と彼女はお互いに思いを寄せていたからである。しかし、彼女の夫が彼女を追って来る。啓順は彼女を安全なところにかくまい、自分は竹居の安五郎と津向の文吉の出入り(大ゲンカ)に出かける。その間に、彼女は亭主に見つかり、連れ戻されようとするが、逃れていく。啓順は、彼女の行き先を探すが、わからない。

 そしている間に、江戸から追ってきた追手と息が合うようになったり、病気の子どもの治療をしたりして月日が過ぎ去って、ようやく、彼女が伊勢にいることが分かり、伊勢へと向かう。その途中でも、彼は、またしても、立ち寄った農夫の訴訟事件に巻き込まれたりしてしまう。そして、彼が伊勢についた時は、彼女は疲労が重なって死んでしまっていた。

 まことに不運がついてまわる。出会った人の止むに止まれぬ事情を感じ、そこで道草を食い、それぞれの人を助けるが、自らは、結局、行きついたところで不運が待っている。啓順の旅は、その不運の連続なのである。

 それから、啓順がどうなるか。これはまた、明日、読了後に書くことにする。今日は、何か大きな予定があったような気もするが、予定表に控えていなかったので忘れてしまった。困ったものだが、まあ、生き死にかかわることでもないだろうから、何とかなるだろう。銀行からお金を下ろしてこなければならないのは確かだ。吉行淳之介ではないが、「天井から銭子がバラバラ降ってこないかなぁ」ではある。

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