2010年2月24日水曜日

佐藤雅美『町医 北村宗哲』

 今日もよく晴れて、比較的暖かな日となった。こういう穏やかな日和が続くと、つくづく嬉しい。昨日見かけた花屋さんの店先は春の花でいっぱいである。クロッカスが大きな芽を出していた。

 昨夜から佐藤雅美『町医 北村宗哲』(2006年 角川書店)を読んでいる。これは昨年末ごろに読んだ『啓順地獄旅』と『啓順純情旅』に続くような作品で、前作では、医学館でも学んだことがある医者の啓順が、ふとしたことから渡世人の世界に入り、そこで江戸の顔役の娘を殺したかどで顔役から追われることになって各地を遍歴して行くというもので、最後は江戸にもどって顔役と対決し、江戸で落ち着くという筋立てだったが、今作では、その江戸での町医者としての生活の姿が、「北村宗哲」と言う名前で描かれている。だから、宗哲の前歴は「啓順」とほとんど変わらず、宗哲は渡世人の前歴をもつ町医者として、医院を開業しており、しかもなお江戸の顔役たちの間ではよく知れ渡った人物であり、医院を訪れる患者や持ちこまれる相談事に当たっていくというものである。

 前作同様、作者は江戸の医学界の事情に精通しており、当時の漢方の処方の仕方や病にも精通していて、その知識を駆使して物語が展開されるので、独自の醍醐味があるし、主人公の人柄も前作同様、情もあり、頼まれるといやとも言えず、金持ちや権高な人物からは大金をもらうが貧しい者には手弁当でも面倒をみるという姿勢が貫かれている。また、作者は、どの作品でも、「生活者」の視点で書いているので、生活感もあふれている。だからと言って、人情噺では終わらない。物語の結末も、悲劇は悲劇のままで記される。

 こうした作品は、時代小説の中でも、しっかりした資料に基づいたリアリティのある独自の作風をもつ作品だと言えるだろう。資料を駆使した作風としては司馬遼太郎が著名だが、佐藤雅美は資料を物語の中で使って展開しようとする。その意味で文学作品としてはよくできた作品ではないだろうか。作者の円熟味を感じさせる作品である。

 今日は、車も少し動かさなければまた故障しそうだから、夕方、TUTAYAにでも行って『スターゲイト』というアメリカのSFテレビドラマのDVDでも借りてこよう。アメリカのSFドラマは、本当に傑作が多いと思うし、映像がとても凝っているという気がする。そういえば、子どもの頃に『宇宙家族ロビンソン』というテレビドラマをよく見ていたし、たぶん中学生のころではなかったかと思うが、『タイムトンネル』というドラマも見ていた。『タイムトンネル』は、「タイムトンネル」を使って過去の様々な事件に遭遇して行くというもので、詳細な歴史教育の要素もあった。『スターゲイト』は、その『タイムトンネル』の宇宙版で、「スターゲイト」というワームホールで宇宙空間を瞬時につなぐものが発見され、それを駆使して宇宙の各惑星に出かけていくというものである。使われる科学用語や発想は、物理学や生物学などの諸自然科学にしっかり基づいているので、それもおもしろい。人間模様や行動には現代アメリカの気風がうかがえて、それもおもしろい。

 ともあれ、まずは仕事を片づけよう。

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