2009年12月18日金曜日

佐藤雅美『八州廻り桑山十兵衛』(1)

 昨夕、なんだか疲れを覚えて何もする気がなく、久しぶりに「あざみ野」の「神戸珈琲物語」というお店にコーヒー豆を買いに出かけた。たいていは「モカブレンド」を買うのだが、少し飽きた気もしたので、昨日は「キリマンジャロブレンド」を買って来た。

 昨年末から続いている不況が深刻化しているのだろう。クリスマスや年末の街の華やかさはほとんど見られない。寒さの中で、「宝くじ」売りの声がし、人々が身を縮めて行き交うだけである。

 昨夜から佐藤雅美『八州廻り桑山十兵衛』(1996年 文藝春秋社 1999年 文春文庫)を読んでいる。これは、通称「八州廻り」と呼ばれた江戸時代の関東取締役出役という勘定奉行のもとに置かれた下っ端役人で、おもに上州(現:群馬県)、野州(現:茨城県)、常州(現:茨城県北東部)、武州(現:埼玉、東京北部、神奈川北部)、と下総(現:千葉県、埼玉東部、東京東部、茨城西部)といった、いわば江戸周辺地域を見廻って刑事事件などに携わった犯罪取締役人をしている「桑山十兵衛」を主人公にした物語で、この後、いくつかの作品が出されて、シリーズ化されている。

 主人公の桑山十兵衛は、自分が八州廻りをして留守にしていた間に、妻の不義によって生まれた幼い娘をもつ「男やもめ」であり、その妻は子どもの出産と同時に亡くなっているので真相が分からず、そこのことが彼の心に重くあるが、娘を人に預けながら、八州廻りとして数々の事件に関わり、鋭い勘を働かせていくつかの事件に関与していく。

 彼は、上役の言うことなどは聞き流し、いつも自分流の自然体であり、無理をしないし、貧しい者たちが犯した罪などは見逃すようにしている。居合と素振り千本の武芸修業を日課として課している剣の腕前も相当なものだが、自分を誇ったりもしないし、あまり饒舌でもない。どこまでも、自分流の自然体でいくのである。だから、もちろん失敗も多いが、その失敗も黙って背負っていく。

 こういう主人公を中心にして、誘拐されたと届けられた娘が、実は、義父の性的暴行から逃れたものであることをつきとめる「拐かされた女」や、同僚さえ怖れるヤクザと対決する「木崎の喜三郎」や、貧困にあえぐ村人同士の殺人を種にして強請を働いていた彼の下役である「道案内」(手下としてその地方々々で働く者)の裏切りを暴いて、強請られていた村人を助けたりする「怯える目」などの物語が展開されている。

 昨日はその三話まで読んだところで眠りに落ちてしまったが、何も頓着せずに事柄に当たっていく主人公の姿が、佐藤雅美の『物書同心 居眠り紋蔵』とは、また違った姿で、「居眠り紋蔵」よりも妻の不貞という重いものを抱えているだけに、少し重厚に描かれているのがいい。続きは、また今夜にでも読むことにする。

 それにしても、空気が冷たい。朝は覆っていた雲が今は晴れてはいるが、足もとから寒さが忍び上がって来る。書斎が煙草の煙で満ちないように窓を開けているので、よけいに足もとの寒さが感じられる。今夜は早く仕事を切り上げて、鍋の材料でも買ってきて、コタツで鍋でもつつくとしよう。

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